けちょんけちょんに言われた話
旅が始まって数日が経った。
相変わらず旅の要領がつかめないと言うか、毎日の野宿場所に四苦八苦し、風呂や洗濯のタイミングなどがわからなかった。
しかし気分は開放的ではあったので数日の間はその気持ちで誤魔化しつつ過ごしていたのだが、その日ある旅人と出会い気分が一変する事になる。
「よお、お兄ちゃん歩き旅?」
そこには自転車に荷物を載せた中年男性がいた。
「はい、でも福岡を出発したばかりでまだ旅初心者というか」
「あ、そう。俺は旅をもう6年やってんだけどさ」
「ろ、6年!?凄いっすね…」
「なんか兄ちゃんの持ってる装備なんか不安だね」
「そうですかね…?」
「ん?これからどういうルートで行くの?」
「今から太平洋側を北上して北海道を目指そうかと思ってます」
「えぇ?今から歩いて北海道!?北海道って盆過ぎたら寒いの知らないの?」
「いや、まぁなんとかなるかなって…」
「いやいや、北海道なめたらダメだよ!何?食事とかどうしてんの?」
「コンビニとかで買ってます」
「そういうのは6時過ぎてからスーパーに行って割引のお惣菜とか買うんだよ!」
「はぁ…」
「ラジオは持ってんの?」
「いえ」
「ラジオなかったら明日の天気わかんないじゃん!雨降ったらどうすんの?」
「そうですね確かに…」
「資金はどれくらいなの?」
「一応40万です」
「それちょっと少ないんじゃない?今から四国に行ってバイト見つけた方がいいよ!」
「そうですかね?」
「そうだよ!そもそも太平洋側北上じゃなくて日本海側にした方がいいな!そっちの方が近いし、まして歩きなんていつ着くかわかんないぞ!」
「そう、ですね…」
「そういえば非常食は持ってんの?」
「いや、それも持ってないです」
「なんだそれ、今まで出会った旅人で非常食持ってないの君が初めてだよ」
「…………」
「正直君は旅はしない方がいいかもね、特に歩いて日本一周なんて」
……………
かなり凹んだ。
やっぱり無謀なのかな…。
今から北海道に行くなんて。
そう思いつつも歩みを辞める訳にもいかず、足取り重く前に進むしか今の僕にはできなかった。